【ゆうらリズム】米国の発達障害

コラム

米国の著名なディスレクシア(限局性学習症LDの中の読字障害)当事者としては、トム・クルーズ、オーランド・ブルーム、スティーブン・スピルバーグが有名である。

名優、アンソニー・ホプキンスもASD(自閉スペクトラム症)であることをカミングアウトしている。

彼は、何月何日が何曜日だったかという、日付と曜日を即座に計算できる特技を持っている。

チャールズ・シュワブ(同名の証券会社の創業者)、リチャード・ブランソン(主に英国だが、バージングループ)、ジョン・チェンバース(元シスコのCEO)、そしてスティーブ・ジョブズ(アップル)らは言うまでもなく、フォード、ゼネラル・エレクトリック(GE)、IKEAの創業者などがいる。

キンコーズの創業者で、その後も数々の企業を興したポール・オーファラ氏は、ADD(注意欠如症)とディスレクシアの両方を持っている。

彼は、「誰もが皆、ディスレクシアとADDになるべきだと思う」とまで語っている。

起業家、創業者の資質には、発達障害はむしろ不可欠という医師がいる。

自閉スペクトラム症(ASD)に関しては、特にIT系企業にごろごろいて、別名シリコンバレー症候群といわれることがあるほどである。

LDの書字障害であってもキーボードやタッチパネル操作ができれば活躍できるのがIT系企業だったから、障害を意識されることが少ないこともある。

ビル・ゲイツもまた、ASDを持つことで有名である。

私も1990年代のパソコン、インターネット隆盛期にICT業界にいたため、発達の課題を持つ人がホントに多かったなあと実感している。

何故かって?

新しい業界には学歴があって学校のオーソドックスなお勉強が出来て標準的でそつのない人はやって来ず、ちょっと変わった人やおおいに変わった人しかいないからだ。

かく言う私も例外ではなくADHD(注意欠如多動症)、ASDを持っている。

発達上の特性の中には、空間造形能力、直感力、けた違いの値を示す聴覚・視覚能力、集中力、継続力、突進力、実現へのかけ離れた妄想力、自我の欲求、高い記憶力と反復耐性などがある。

振り返るとそれらの特性を持ちながら差別や挫折や偏見に負けず、数少ない支援者の力を借りて、偉大な発見、発明、芸術活動をしたり、スポーツや企業活動をし名声を残した偉人が多いのも事実である。

それらの特性をどう引き出し、社会参加・貢献、ときとして文明の進展に役立てるか、人類が試されていると思う。

私たちの仕事の一部は、それらの埋もれた才能を発掘し、チームで磨きをかけるリクルーター、スカウトマン、インキュベーターである。

「発達障害の子どもたちの進路と多様な可能性」(改訂新版) 日野公三 著(WAVE出版 刊 2023年)より抜粋(一部加筆)

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