【ゆうらリズム】母の日によせて

コラム

5月11日の母の日によせてー
『発達障害の子どもたちの進路と多様な可能性』改訂新版
日野公三 著 より抜粋


お母様たちよ!

泣くなかれ。
悲しむなかれ。
黙りこくなかれ。
振り返るなかれ。

連日、明蓬館への期待や関心から電話やメールをたくさん頂戴します。
切羽詰まった深刻な内容に、私もまたついつい身構えてしまうというのか、身繕いをし、背筋をシャンと伸ばして向かい合うことが求められます。
子どもの発達の特性に直面し、直視に至るまでの苦しみ。
周囲との折り合いに精根尽き果てるような体験。
いつも頭を下げてばかりの連続。

発達障害という言葉の響きに驚き、知ることよりも無関心、拒絶を決め込む大多数の人たちに囲まれ、孤立感を深める親たち。とりわけ母親。
理解してくれる人が少なく、次々に試練がおそってくる。
一般論のありふれた返答や面談。

共感はおろか、問題意識の理解・共有さえもなされない面談や、相談支援とは到底言えない経験を積み重ねて、絶望の境地に至っているケース。
学校の教員たちの中にも利他愛を修得する間もなく、スキルを身につける謙虚さを失った者がいます。
パワハラに近い上から目線の指導や助言に選択肢を奪われ続けた親たち。

人に相談することに疲れ果てた母親の役に立つ。
明蓬館SNECの支援と伴走の対象は、生徒であり、母親、そしてその他の家族です。
クレド(われらの信条)にもそう文面化し、全教職員と心に期しました。
ファーストの先には生徒がいます。
その次のファーストは保護者、とりわけ母親です。
我々の仕事は入学に遠い数年前から始まっています。クレドの中の行動原則にもこう記してあります。
「業務中のすべての時間をこれから入学される生徒と家族、そして入学された生徒と家族に捧げられるようにします。」

最近では小学高学年の子どもたちの心理検査依頼、SNEC見学が増えています。
高校の進路にSNECという道筋が見えただけで、親子ともに心に余裕ができた、という声に接すると、SNECを生み、創り、丁寧に心を込めて育んできて良かったと思います。

お母様たちよ。
泣くなかれ。
悲しむなかれ。
黙りこくなかれ。
振り返るなかれ。
絶望の中に希望の光をあきらめるなかれ。
無関心の人や一般論の助言をする人に近づくなかれ。
そして自らの生命の力をどこまでも信じて。
神に選ばれ、試練を与えられた〝選ばれし人〟であると昂然と顔を上げて欲しい。

『発達障害の子どもたちの進路と多様な可能性』改訂新版
日野公三 著 より抜粋



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