【ゆうらリズム】製品を抱いて寝る癖

コラム

偉大な経営者の講演録やテープやCDはこれまで擦り切れるほど、聴いてきた。
その中で、何度聞いても触発されるのは、松下幸之助氏だ。
松下幸之助氏が生前残した言葉には驚くほど、人の心理を洞察し、揺さぶるものがある。
あるとき、新製品が売れずに言い訳口調に徹する幹部を見るに見かねて言った言葉が、「ほな、きみは製品を抱いて寝た事があるのか」だ。
きっとその場に居合わせた人はあっけにとられたことだろう。
およそ会議の席上に出てくる言霊(ことだま)ではないからだ。
そうまでして、「どうやったら売れるのか」「どんな製品をお客様はもとめているのか、真剣に考えて考えて考えたのか」幸之助氏は言わざるを得ない気持ちになっていたことは容易に想像できる。
学歴はなく、既成の学力でない、努力と学習力で生涯を貫いた氏ならではの言葉だと私には思えるのである。
私も及ばずながら、かつて扱っていた製品の試作品や出来上がり前のパンフレットなどは、幸之助氏にならって、抱いて寝てきた。
また自室の壁じゅう、わが校の広報資料や新聞記事、ポスター、生徒に関する印刷物などで埋め尽くされている。
イメージトレーニングの道場であり続けている。
良い製品やサービスが生まれる確度は、それを生み出す人の愛情や執念や利用者の姿かたちを想像する力や情報密度に比例するのだと…。
実にぶきっちょなものだ。

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