【ゆうらリズム】群れに背を向ける

コラム

注目される業績を成す人は多かれ少なかれ群れから離れ、孤独な時間をろうそくの炎を見ながら格闘する時期を過ごしています。

しかし、そうしたときこそが至福のときなのです。

人は一人では生きていけない。

私が学校教育に乗り出す以前はそう考えていました。

しかし、独立心、独立の気概を失った、群れの羊のような、われわれ日本人、いや地球人を見る時、もはや一人で生きる人、生きられる人を支援、伴走することがわれわれ学校の使命ではないかと考えています。

一人で山を登る登山家、一人でヨットに乗り込み、世界の海原を走る人がいます。

生涯を断崖絶壁に仏像を彫り、過ごした名もなき人がいます。

われわれの学校にもいます。

小さいときから黙々とバレエに打ち込んでいる生徒がいます。

一緒に始めたお友達が一人抜けまた一人抜けしていくのに。

たった一人で異国の地にバレエ修行へと旅立っていきます。

中学時代、何かのきっかけで教室に入れなくなり、半日を保健室で過ごすようになり、おうちで絵ばかり描いている生徒がいます。

精密なミニチュアを構想して数週間かけてつくっている生徒がいます。

中学時代、教室に入れず、毎日図書室で好きなジャンルの本を好きなだけ読んでいた生徒がいます。

いずれも中学時代、群れに入ることに興味を持たずに孤独な時間を過ごしています。

入学面接で私の目の前には将来の、金の卵たちがいます。

東田直樹さんもその一人でした。

一人の時間、いつも学び、著述に膨大な時間を過ごせる人です。

自閉症の当事者の自己表出、自己表現は世界中の人を魅了するに至りました。

私はそのような孤独とうまくつきあえる生徒が大好きです。

インディペンデント・ラーナー。

2000年最初につくった東京インターハイスクールで掲げた校訓でした。

自律・自立的学習者、生涯を通して学び続けられる学習者のことです。

多感で感性豊かな十代の時期を孤独で過ごせた人には大人になってからたっぷりのごほうびが待っています。

ずっと以前、『私の履歴書(日本経済新聞)』で民俗学者、谷川健一氏が書いた、こんな文章を私は手帳に書き記しています。

独学者は昨日まで橋のたもとでコモをかぶって寝ていて、やおら立ち上がり徒手空拳で闘いをいどみ、自分の力で国を奪い取る戦国時代の野武士に似ている。

奪い取った知識は自分の血となり肉となって躍動する。

孤立しているが、世の独創的な発想や研究は自分で学び、自分で考えることからしか生まれない。

孤立こそ独学者のかけがえのない栄光の印である。

↓ 明蓬館高等学校 公式サイト「校長挨拶」

日野 公三
EuLa通信制中等部 統括ディレクター
明蓬館高等学校 理事長
アットマーク国際高等学校 理事長
NPO 日本ホームスクール支援協会 理事長
東京インターハイスクール 特別顧問

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